2016年12月13日火曜日

インターネットの情報、素直に信じていいの? 今後を占う「post-truth」(脱真実)と「フェイク(偽)ニュース」

今年のキーワード「post-truth」(脱真実)

英語辞書の権威、オックスフォード英語辞典が、2016年を象徴する単語として選んだのは「post-truth」でした。簡単にいえば、事実を重視しないこと、「脱真実」です。

この「post-truth」の背景には、新聞などの既存の組織や媒体が提供する、事実への不信感が高まる一方、ニュースを得る場所として、インターネットのソーシャルメディアが台頭したことによると言われています。


インターネットには、あいまいな情報や事実と異なるデマの内容も多く、また、自分の信条にあった情報を受け入れやすい傾向があり、「post-truth」(脱真実)は、今後の時代の傾向になる可能性が大ですね。

なお、新聞・雑誌に対する信頼度やインターネットからの情報入手の割合をみると、世界的に見て、

・マスメディアの新聞・雑誌・TVの信頼度が低くなっている
・インターネットで国内外の情報を取得する人が多い

という結果になっています、詳しくは下記を参照下さい。この傾向は、ますます大きくなると予想されます。


なお、下記のWeblioのオンライン英会話コラムによると、「post-truth」とは、

「世論を形成する上で、客観的な事実が重視されず、感情や個人の信念に訴えることの方が影響力を持ってしまう状況」を表す形容詞

だそうです。

 オックスフォード英語辞典が2016年今年の言葉を発表 | オンライン英会話コラム
 https://eikaiwa.weblio.jp/column/?p=16756


イギリスのEU離脱の国民選挙、アメリカの次期大統領選の際の、客観的な事実を提示するよりも個人の感情に訴えるような政治手法を指して、「post-truth」 は、多くの場合「post-truth politics」というフレーズで使われたようです。


今年、話題になったネットに広がる「フェイク(偽)ニュース」

もう一つ、話題になったのが、ネットに広がる「フェイク(偽)ニュース」でした。

米大統領選では「ローマ法王がトランプ氏を支持」、「クリントン氏の流出メール担当のFBI捜査官が無理心中」、「俳優デンゼル・ワシントンさんがドナルド・トランプ次期大統領を支持した」といった”嘘のニュース”がFacebookで大きく拡散されました。


米大統領選後、フェイク・ニュースの流布に対して批判が発生したことで、Facebook、Google、Twitterはそれぞれ事態改善の手を打つことを約束しているようです。

 ネットに広がる「フェイク・ニュース」― 嘘と真実の見分け方とは
 ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6474.php

インターネットが登場し、Facebookなどのソーシャル・メディアによって、あっという間に多くの人に情報を伝達することが可能になりました。

これからも、アクセス数を狙った「フェイク(偽)ニュース」が、ますます増えていくと予想されます。

さらに、日本でも「post-truth(脱真実)」の例として、不正確として多くの医療・健康関係の記事が非公開になった事件がありました。

この事件、DeNAが運営する医療情報のサイト「WELQ」が、「信ぴょう性が薄い」「無断転載とみられる内容が多い」などの指摘を受けたことが発端です。

それにしても、インターネットの医療・健康関係の記事の中にも、信頼がおけないものが多いということに驚きましたね。



「post-truth」(脱真実)と「フェイク(偽)ニュース」への対応

これからの時代のキーワードになる、「post-truth」(脱真実)と「フェイク(偽)ニュース」に対して、どのような対応をしていけばよいか難しいですね。

少なくとも、以下を心がけたら良いかもしれません。

①Facebook、Twitterなどのソーシャル・メディアの価値観の違う情報(政治、宗教など)には疑いの目を持つこと

②命や健康に係る記事は慎重に選択する (誰が書いたものなのか、誰が運営しているサイトなのかを確認する)

③新聞・雑誌・TVなどのマスメディアの情報(インターネットへの発信記事含む)も活用する



さらに、これからは、インターネットの情報の正確性を読み取る「ネットリテラシー(インターネットリテラシー)」が大事になってきます。 (注)リテラシー(literacy)は読み書きの能力のこと

「ネットリテラシー」は簡単に言えば、①ネット上の情報の正確性を読み取り、②情報の取捨選択や適切な対応ができ、③プライバシー保護やセキュリティ対策が実施できる ことです。


なお、2016 12/19の日本経済新聞の記事に、ドイツでは1月、ロシア系の少女が難民に暴行されたとするロシア国営テレビの虚偽ニュースがSNSで増幅、ロシア系住民の抗議デモが広がったそうです。

ウクライナ問題を巡る対ロ制裁を主導するメルケル首相を揺さぶる狙いだったと見られています。

2016 12/19 元工作員が語る ロシア、デマ拡散サイバー部隊  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO10735930W6A211C1000000/


この日本経済新聞の記事には、偽ニュースサイトの立ち上げも頻繁に行われており、「ロシアはSNSの影響力が増す情報環境の変化を捉え、政治的に活用している」とありました。

インターネットの記事、どこまで信用していいのか、だんだん分からなくなって来る時代です。



■ マスメディアの信頼度は世界的に低く、インターネットからの情報入手が高い


参考情報①によると、世界各国の「新聞・雑誌に対する信頼度(2010-2014年)」の結果をみると、意外に信頼しない国が多いですね(一部の国の調査結果はありませんが)。

アメリカでは信頼度(DI値)は-53%で、大きく信頼しない方に片寄っています。逆に、日本は+46%で信頼する割合が高いです。

また、テレビの信頼度も意外に低く、アメリカでは信頼度(DI値)は-50%、日本は+38%です。


(注)信頼度は、「非常に信頼する」「やや信頼する」の肯定派を加算して、「あまり信頼しない」「全く信頼しない」の否定派の値を引き、信頼度(DI値)を算出。


次に参考情報②によると、「国内外の情報を取得する際にインターネットを週一以上で使っている(2010-2014年)」で、50%を超える国が多く、アメリカは69%、日本は50%(日本の調査年は2010年)になっています。


つまり、世界的に見て、マスメディアの新聞・雑誌・TVの信頼度が低くなっており、インターネットで国内外の情報を取得する人が多いという結果です。



参考情報①
世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度(2010-2014年)
- ガベージニュース
http://www.garbagenews.net/archives/1102258.html

参考情報②
新聞、テレビ、インターネットが情報取得のためにどれほど使われているのか(2010-2014年)
- Yahoo!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fuwaraizo/20141128-00041026/



■ 日本のpost-truth(脱真実)の代表例
■  不正確として多くの医療・健康関係の記事が非公開に


なお、post-truth(脱真実)で思い出すのは、日本の医療・健康関係の多くの記事が、内容が不正確として、非公開になった事件です。

これの発端が、今年11月にDeNAが運営する医療情報のサイト「WELQ」が、「信ぴょう性が薄い」「無断転載とみられる内容が多い」などの指摘を受けた事件(今は記事は非公開になっています)。

「WELQ」のように、記事の真実や信頼性よりも、アクセス数の増加を狙った健康・医療の記事は、一歩間違えば、大変な事故になります。

ITmedia ニュースによれば、この「WELQ」の事件を発端に、他のメディアでも記事の非公開化が相次いでいます。


 nanapiも「健康・医療カテゴリー」非公開に 「内容の正確性をいま一度精査」 - ITmedia ニュース
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/08/news116.html

・KDDI子会社のSupershipは、同社が運営するノウハウ共有サイト「nanapi」で、医療・健康カテゴリーなどの一部記事を11月30日から順次非公開。「内容の正確性をいま一度社内で精査し直す」とのこと。

・サイバーエージェントは、同社バイラルメディア「Spotlight」の記事約10万件のうち、内容に問題がある医療関連の記事数千件を非公開。

・リクルートの「ギャザリー」も、12月1日から順次、健康に関連する記事約1万6000本を非公開。記事に問題がないか、再チェックすることに。


なお、以前、まだWELQの記事が公開されていた頃、記事を見たとき、書いた人が不明で、末尾には次のような説明があり驚き、これは信用できないと感じました。

「当社は、この記事の情報及びこの情報を用いて行う利用者の判断について、正確性、完全性、有益性、特定目的への適合性、その他一切について責任を負うものではありません。」

健康・医療に関して、信頼性の無い記事を公開し、責任を一切負わないとした、WELQの事件、本当に大問題で、刑事事件にならないのが不思議です。

なお、「WELQ」の記事には、他人の記事を使いながら、著作権侵害となることを巧妙に回避した疑いもあります。大手のDeNAでさえ、こんな状況なのかと唖然とさせられる事件です。詳しくは、下記を参照下さい。


 DeNAリライトマニュアルの巧妙すぎる手法 | メディア業界 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
 http://toyokeizai.net/articles/-/148798