2005年4月25日に乗客ら107人が死亡し、562人が負傷したJR福知山線脱線事故、鉄道の事故としては、歴史に残る事故でした。事故発生から10年の今年2015年、その当時、私が公開した関連ブログを今一度、ここで”当時のままの内容”で、再度公開したいと思います。
なお、10年前のブログの記事で、内容の一部に誤解やミスがあったり、参考にしたURLが既になくなっているものもありますが、当時のブログそのままの内容で公開します。ご了承ください。
私は、若い頃、鉄道関係のコンピュータ・システムを担当し、いかに日本の鉄道が安全か、そして、鉄道が安全に運行できるよう関係者が日々どれほど苦労しているか、肌で感じてきました。
その意味で、JR福知山線の脱線事故は非常にショックで、その当時、様々記事を読んで、調査したことや自分の考えを、いくつかブログで公開しました。
今回は、この事故発生当時に公開したブログを、そのままの内容で紹介致します。少しでも、参考になれば有り難いです。
≪参考≫ 2015.4.26追記 「余裕のないダイヤ」「自動列車停止装置の未設置」
今年4月24日のNHKニュースに、「当時の国の事故調査委員会が、運転士のブレーキ操作が遅れたことが原因とする報告書をまとめている」とありました。
運転士のミスや違反4年余で約420件 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150424/k10010059971000.html
なお、当時の国の事故調査報告書が以下に公開されていますが、多くの専門家が分析しているにも係わらず、原因は「運転士のブレーキ操作が遅れ」ということになっています。
福知山線脱線事故・事故調査報告書 平成19年 6 月28日
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/bunkatsu.html
『原 因
本事故は、本件運転士のブレーキ使用が遅れたため、本件列車が半径304mの右曲線に制限速度70km/h を大幅に超える約116km/h で進入し、1両目が左へ転倒するように脱線し、続いて2両目から5両目が脱線したことによるものと推定される。
本件運転士のブレーキ使用が遅れたことについては、虚偽報告を求める車内電話を切られたと思い本件車掌と輸送指令員との交信に特段の注意を払っていたこと、日勤教育を受けさせられることを懸念するなどして言い訳等を考えていたこと等から、注意が運転からそれたことによるものと考えられる。
本件運転士が虚偽報告を求める車内電話をかけたこと及び注意が運転からそれたことについては、インシデント等を発生させた運転士にペナルティであると受け取られることのある日勤教育又は懲戒処分等を行い、その報告を怠り又は虚偽報告を行った運転士にはより厳しい日勤教育又は懲戒処分等を行うという同社の運転士管理方法が関与した可能性が考えられる。』(”福知山線脱線事故・事故調査報告書 平成19年6月28日”から引用)
上記のように、原因が記載された箇所には、それ以外の「余裕のないダイヤ」「自動列車停止装置の未設置」については、言及がありませんでした。
事故が起こったときに、それをヒューマンエラーにするのは簡単ですが、何がヒューマンエラーを誘発させたのか、また、ヒューマンエラーが発生したとき、安全サイドに働く仕組みが何故無かったのかの分析は、とても大事だと考えています。
以上のように、福知山線列車脱線事故は、運転手のヒューマンエラーの視点から、よく分析されていますが、列車の安全を考えるかぎり、
①運転の元となるダイヤに余裕が無かった
②自動列車停止装置が未設置
の2点は、もう少し議論がなされて良いと考えています。
この2点について、2011年の西日本旅客鉄道株式会社の報告資料と、2005年当時の私が公開したブログの記事から、もう一度考えてみたいと思います。
参考資料1:
福知山線列車脱線事故の課題検討会 報告
(2011年) 平成23年4月25日 4・25 ネットワーク 西日本旅客鉄道株式会社
https://www.westjr.co.jp/safety/fukuchiyama/followup/pdf/followup_houkoku.pdf
参考資料2:2005年05月05日
”安全対策不備なJR宝塚線” - IT社会の羅針盤
http://blog.goo.ne.jp/yume-one-light/e/68102679c8a15e51c36654744dda299a
■余裕のないダイヤ
参考情報1の報告書によると、当時のダイヤは「回復余力の少ないダイヤ」と説明しています。
『駆け込み乗車や一時的な利用客の集中、天候条件、設備不具合などによる列車遅延に対しての余裕が不十分であったのは事実であり、そうした意味で回復余力の少ないダイヤとなっていた。』(参考資料1のP30から引用)
また、同報告書によると、当時はダイヤの検証不備があったと、以下を説明しています。
『ダイヤ改正後には、前述したようにダイヤ作成担当者が現地へ赴き、ご利用状況の変化や列車の遅延状況などの把握に努め、必要な場合はダイヤの修正を行なってきていた。しかしながら、福知山線列車事故以前はこうした修正のしくみを全社的には明確に定めてはおらず、適宜、担当者の判断でなされるようなところがあった。
福知山線列車事故後は、曲線や分岐器に ATS を整備するとともに、毎年時期を定めてダイヤの検証を行い、遅延が見受けられる列車については、支社で遅延の発生箇所およびその原因を分析し、必要があれば速やかにダイヤを修正する仕組みを全社的に構築した。』(参考資料1のP30)
なお、参考情報2(当時の朝日新聞の記事)には、以下の説明がありました。もう少し検証が必要ですが、この内容をみると、列車ダイヤの過密化が進んでいたと予想されます。
『(1) 列車速度のアップと列車ダイヤの過密化
・91年3月にカーブ手前の直線の制限速度は、時速100キロから120キロに上げられていた。
・96年12月に現在の上り線の右カーブが新設。半径600メートルの緩やかなカーブから、半径300メートルの急カーブに変更された。
・03年12月のダイヤ改定で宝塚線の快速電車の停車駅が増えたが、ラッシュ時などの所要時間は変わらず、一層のスピードアップが求められた。』(参考情報2)
■自動列車停止装置の未設置
参考情報1の報告書によると、自動列車停止装置(ATS-P)があれば事故を防げたとあります。
『 JR西日本はATS-Pの整備を、信号機での停止信号冒進防止機能に加えて導入路線全体を連続的に速度制御することも合わせて実施することとし、高密度線区から順次計画的に進めてきた。
しかしながら、JR宝塚線のATS-P工事中に福知山線列車事故が発生した。
本件事故は曲線における大幅な速度超過により脱線したものであり、ATS-Pがあれば事故を防げたと考えている。JR西日本はこのような事故の発生を想起できていなかったことを反省している。』(参考資料1のP39)
なお、参考情報2(当時の朝日新聞の記事)には、以下の説明がありました。この記事からみると、新型の自動列車停止装置への変更完了予定が、計画の1年半も延びたことになります。安全対策を、何故延ばす必要があったのか、とても大事な問題です。
『(2) 安全対策の不備
・高速化の一方で、宝塚線の安全施設は旧型の自動列車停止装置(ATS―SW)だった。
接続する東西線には設置されたが、宝塚線は旧型のままであった。その後、03年12月のダイヤ改定前に導入が決まったが、設置完了予定は今年6月末(追記:2005年6月末)と大幅に遅れていた。
・現行のATS―SWでも、速度超過を感知すると自動的に非常ブレーキをかけることができるが、同社は現場には設置していなかった。』(参考情報2)
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■ 2005.05.03 ブログ公開 ”JR宝塚線(福知山線)の脱線事故”
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■ *当時の内容。誤解やミスがあるかもしれません、ご了承ください。
■ * 無効なURLも多々あります。
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4月25日に発生した、JR宝塚線(福知山線)の脱線事故は、107人の死亡者を出した悲惨な事故です。尊い107人の命を奪った、この事故を教訓として、二度とこのような事故が起きないよう、様々な安全対策が望まれます。
今回の事故の原因は、単純ではありません。JR西日本の会社の運営自体にも大きな問題がありますが、それ以外にも問題はたくさんあると考えています。
以下に、私が現在考えている問題を列挙します。
1.グローバルな競争社会になり、企業の目的として、効率・利益が優先され、安全・品質は二の次になっている。
JR宝塚線で運転経験がある男性(60)は「スピード化とともに駅での停車が難しくなった」と証言しています。電車のブレーキ機能も向上し「今はぽんと一度のブレーキで止める」。その分、作動が少しでも遅れると、オーバーランしてしまうそうです。
2.過密なダイヤの為、列車が遅れることもあったが、少しの遅れも問題視された。
JR福知山線では、2003年12月のダイヤ改正でJR西日本が宝塚─尼崎間の上り快速の停車駅を一つ増やしたにもかかわらず、大半の電車の宝塚の発車時刻と尼崎の到着時刻は以前のままだったそうです。
JR西日本は、兵庫県尼崎市で起きたJR宝塚線の脱線事故前、1秒単位で電車の遅延状況をつかむ調査を行っており、過密ダイヤになっていた尼崎駅でも今月8日からの1週間、朝夕のラッシュ時に発着する列車の運転士が出発時間を1秒単位で自主報告していたそうです。
3.交通機関は時間に正確でなければならないという国民性が、運転手も含めた交通機関の関係者に有言・無言の圧力をかけている。
この”時間に厳しい”という国民性を、”90秒遅れ、欧米では「時間通り」 日本では定刻が常識”と言って海外のメディアは批判していますが、しかし、これは本質ではありません。時間の遅れを取り戻す事が出来ないほどの過密ダイヤが問題だと思います。
4.企業の利益を出すため、働いている人に多くのストレスが、かかる社会になっている。人員削減による仕事の増加、派遣社員増加による仕事の質の低下等。
5.会社の経営内容は変化しているにもかかわらず、社員に対する教育・福祉・医療関係は旧態依然である。いや、逆に低下しており、社員の精神的・肉体的なケアができていない。
6.政治の対応があまりにも貧弱、責任をJRだけに押しつけ、交通機関に必要で具体的な安全対策を指示していない。
今回の事故に対しては、本来ならば、プロジェクトをつくり、鉄道の安全に関して、列車ダイヤに問題はないか、ATSの設置状況はどうなのかといったことを、国として具体的に安全策を各社に指示すべき。
それにしても、ミスをした運転士に課される「日勤教育」は、何でしょうか?自殺者まででた「日勤教育」、もう少し、まともな安全教育はできないのでしょうか?今回の事故の運転手も、様々なプレッシャーの中で、運転をしていたと考えられます。
そう言えば、今日のニュースに以下がありました。
”JR西日本は3日、脱線事故で不通となっている宝塚線(福知山線)で、列車の速度を制限内に抑える新型の自動列車停止装置(ATS―P)をとりつける工事を始めた。2日、北側国土交通相が「新型ATSの整備が運転再開の前提」との意向を示したのを受け、同社は工事完了前でも運転を再開する可能性があるとしていた方針を一転させた。工事はこの方針変更を受けて始まった。”
ということです。なんという自主性の無い安全意識でしょうか。何故、北側国土交通相が言う前に、”ATSを設置してから、運転を再開します”ときっぱり宣言しないのでしょうか。
あのような大事故を起こしたJR西日本に、今一度、安全とは何かを真剣に考えて欲しいと思います。何をしたら安全なのかは、大臣ではなく、JR西日本自体が一番よく知ってはずです。
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■ 2005.05.05 ブログ公開 ”安全対策不備なJR宝塚線”
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■ *当時の内容。誤解やミスがあるかもしれません、ご了承ください。
■ * 無効なURLも多々あります。
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”JR宝塚線(福知山線)の脱線事故”については、徐々に問題点が明らかになりつつあります。詳しい内容が、以下の朝日新聞のホームページに紹介されてました。
参考情報:200505月05日06時57分
”JR脱線、新型ATS不備を捜査へ 安全対策の過失追及-社会”(asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0504/OSK200505040033.html?ref=toolbar
兵庫県警捜査本部(尼崎東署)は、今回の脱線事故は、快速電車が制限速度の時速70キロを大きく上回る時速100キロを超えるスピードで、半径300メートルの急カーブに進入したことが主要な要因と判断したそうです。
なお、上記朝日新聞の内容を整理すると以下になりますが、、問題は、”列車速度アップ”、列車ダイヤの過密化”に係わらず、安全対策が殆ど取られてなかったことが分ります。
(1) 列車速度のアップと列車ダイヤの過密化
・91年3月にカーブ手前の直線の制限速度は、時速100キロから120キロに上げられていた。
・96年12月に現在の上り線の右カーブが新設。半径600メートルの緩やかなカーブから、半径300メートルの急カーブに変更された。
・03年12月のダイヤ改定で宝塚線の快速電車の停車駅が増えたが、ラッシュ時などの所要時間は変わらず、一層のスピードアップが求められた。
(2) 安全対策の不備
・高速化の一方で、宝塚線の安全施設は旧型の自動列車停止装置(ATS―SW)だった。
接続する東西線には設置されたが、宝塚線は旧型のままであった。その後、03年12月のダイヤ改定前に導入が決まったが、設置完了予定は今年6月末と大幅に遅れていた。
・現行のATS―SWでも、速度超過を感知すると自動的に非常ブレーキをかけることができるが、同社は現場には設置していなかった。
・レール脇に付ける脱線防止ガードも未設置だった。
列車スピードがアップされ、列車ダイヤが過密になったにも係わらず、安全対策が以前のままであったということであり、これでは、事故の危険性は増すはずです。
効率・機能がアップすれば危険性が増すのは必然ですが、何故か今回の件に関しては、この当たり前のことが考慮されていません。
列車スピード・列車ダイヤと安全対策を総合的に判断するような仕組みがJR西日本に無かったのかと不思議でなりません。
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■ 2005.05.08 ブログ公開 ”JR西日本が安全対策について具体的な方向性”
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新聞社のニュースによると、JR西日本が、JR宝塚線(福知山線)の脱線事故依頼初めて、安全対策の具体的な方向性を示しました。主な内容は以下になっています。
1.最高速度を低く設定し直すことによる列車ダイヤの全面的な改定
駅での乗客の乗り降りにかかる停車時間や、余裕時間を再検討
2.列車本数の多い線区で、新型の列車自動停止装置(ATS-P)の整備
京阪神の主要路線に新型の自動列車停止装置(ATS―P)を全面導入
3.旧型の列車自動停止装置(ATS)を活用したカーブでの速度制御方式の採用
ローカル線には現行のATSを改良して速度超過防止機能をつけたものを設置
4.安全を優先する企業風土の構築や、安全を担う人材育成、教育制度の見直し
なお、上記の安全対策の詳細な内容、及び、今後の実行結果については、今回の事故の大きさ、多様な問題点から考えると、第三者の継続的なチェックが必要だと考えます。
それにしても、何故、上記の様な安全対策が、事故が起きない前に実現できないのか不思議です。少なくとも、列車運行として大事な、列車ダイヤの適正化については、もう少し早めに検討できなかったのでしょうか?
また、JR西日本以外の鉄道会社においても、今一度、安全対策の再見直しをして欲しいものです。
参考情報:
「全線ダイヤ改正」明言 京阪神近郊 JR西 過密緩和図る (産経新聞)
(goo ニュース)
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20050507/e20050507000.html
「日勤教育」や列車ダイヤ見直し JR西日本が安全対策 (朝日新聞)
(goo ニュース)
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20050507/K2005050700061.html?C=S
JR西日本が事故再発防止策、過密ダイヤ全面見直し(2005/5/8)
(FujiSankei Business i. 総合)
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/art-20050507213010-XQHDLNWZPO.nwc
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■ 2005.05.16 ブログ公開 ”企業の社会的責任(CSR)とは何でしょうか?”
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企業は規模が大きくなるにつれて、社会に与える影響は大きくなり、最近は、CSRつまり”企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)”が盛んに言われるようになりました。
この、企業の社会的責任(CSR)とは、株主の利益や短期的な利潤の追求だけでなく、企業倫理を確立して法令を守り、環境保全などの面でも社会的な責任を果たしていかないと、継続的な発展は望めないし、企業の存続すら危うくなる、という考え方です。
まあ、考えれば当たり前ですが、この”当たり前のこと”が叫ばれること自体、現代は常識が通じなくなっているかもしれません。
このことは、最近の企業の不祥事、それも安全が最も問われる食品・交通関係の事故(雪印、三菱自動車、JR西日本、JAL)を見ると分りますが、利益・効率を重視するあまり、”当たり前であるはずの安全を無視した”企業活動が増えてきているように感じます。
”顧客満足(CS)”、”企業の社会的責任(CSR)”、”国際的な品質規格:ISO9001”というような言葉が、ここ数年盛んに言われていますが、”形を整える”だけの安全・品質になっていないでしょうか?形式だけの安全・品質ほど危険なものはありません。
企業の社会的責任(CSR)の中で、一番大事なのは、”自然・社会・従業員”の”安全・品質を守る”ことだと思います。三菱自動車、JR西日本の事故を考えると、今一度、企業の社会的責任として、何を最優先にするか考えて欲しいと思います。
また、消費者である私たちも、単に安いから品物を購入するのではなく、”環境にやさしく、安全で、品質がよい”品物を購入することで、企業の活動が、売上げ・利益一辺倒にならないよう歯止めをかける時期にきています。
さらに、企業の社会的責任(CSR)を言う場合、その企業で働く従業員に対しての企業の責任も考える必要があります。
今回のJR西日本の事故に関して、下記記事によると、列車運行や高見運転士の指導、教育に当たっていた管理部門の職員についても、業務上過失致死傷容疑で刑事責任を追及する方針を固めたということです。
参考情報1:2005年04月29日
”JR西日本の労務管理、刑事責任追及へ 兵庫県警-尼崎・列車脱線事故”
(asahi.com)
http://www2.asahi.com/special/050425/OSK200504280089.html
”厳しいペナルティーを科すなどして列車の遅れを許さない一方で、遅れの回復は会社としての指針を示さずに運転士任せにしていたことが、高見運転士の無理な速度の運転につながった可能性が高いと判断。労務や運行管理の責任者の刑事責任の追及が不可欠と判断した。” (上記参考情報1より)
また、下記参考情報2には、高見運転士が、昨年6月、JR学研都市線で約100メートルオーバーランし、訓告処分を受けたあとに、友人に語った以下の記事が紹介されています。
参考情報2:2005年05月12日
”「遅れ取り戻すほど評価」 死亡の運転士、友人に語る-尼崎・列車脱線事故”
(asahi.com)
http://www2.asahi.com/special/050425/OSK200505110058.html
”「今回は何とか運転士をやめなくて済んだけど、今度やったら(乗務を)おろされるかもしれない。会社はミスに厳しく、運転士から車掌に戻る人も少なくない」と不安を漏らした。” (上記参考情報2より)
企業の社会的責任と言う場合、企業の外に目がいきがちですが、企業が社会的責任を果たすため、まずは企業活動を実施している従業員が、社会的責任を果たせるよう、仕事の環境を整備する責任が、企業にはあります。決して、従業員を”安全・品質と効率の板挟み”にしてはいけません。
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■ 2005.05.21 ブログ公開 ”(JR西日本)福知山線のダイヤ、余裕をもたせるよう再編成”
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■ *当時の内容。誤解やミスがあるかもしれません、ご了承ください。
■ * 無効なURLも多々あります。
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あるコーヒーショップでコーヒー豆を買った時、狭いスペースの中で店員さんが、一生懸命に袋に詰めようとしていたが、その途中でコーヒーを落としてしまった。そのあと、店員さんはすまなそうに私に謝って、別なコーヒー豆を渡してくれた。
まあ、どこにでもあることで、特別なことではないが、しかし、よく観察してみると、そこの店のスペースには余裕がなく、店員さんが何をするにしても、物を落とすとか、間違いを起こしやすい感じなのである。
これは一見なんでもなさそうに見えるが、考えてみると、最近の企業の活動全般を象徴しているように感じた。効率優先、無駄なものは排除、余裕のない仕事環境、これらは全て従業員にストレスを与え、また間違いが起きやすい状況を作っているように思える。
効率アップ、費用削減、顧客満足向上・・・・これらの為に、仕事の環境はますます厳しく悪くなっている。その結果、従業員が考えなければならない事が多くなり、従業員にストレスは溜まり、事故発生確立は、以前より高くなっているように感じる。
”JR宝塚線(福知山線)の脱線事故”の原因の一端にも、運転環境の悪化がある。
下記情報によると、事故電車の快速電車のダイヤは、下記のようになっていた。
参考情報:2005.05.14 ”JR西 乗り継ぎ時間厳守「指示」”
( 産経新聞 - goo ニュース)
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20050514/e20050514000.html?C=S
(1) 尼崎駅に午前9時20分10秒に到着予定
(2) 乗り継ぎの姫路発長浜行き新快速は9時23分発
(3) 乗り継ぎ時間は2分50秒
(4) 乗り継ぐためのホーム移動時間は通常1分程度
(5) 結果的に、乗客の移動時間1分を差し引くと、列車間の余裕は1分50秒。
(注)電車が1分以上遅れると新快速に乗り遅れる客が出る可能性もあり、乗り遅れると、次の新快速まで10分以上待たされる。
以上のような余裕のない列車ダイヤであるにもかかわらず、JR西日本は尼崎駅で東海道線新快速電車の乗り継ぎ時間を厳守するよう福知山線の運転士に指示していたとのことである。
このような厳しい列車ダイヤの中、事故当日、電車は、直前の伊丹駅を1分30秒遅れて出発した。当然、尼崎駅までの運転時間を短縮しなければ、新快速への乗り継ぎに支障がでる可能性があった。これは、運転士にかなりのプレッシャーがかかったと予想されます。
余裕のない列車ダイヤを作り、その上で、乗り継ぎ時間を厳守するよう指示することは、あまりにも無謀すぎます。(最悪の職場環境と言えます)
”列車の遅れが絶対に発生しない”などと言うことはありえないはずです。そのため、通常は多少列車の遅れが発生しても、乗り継ぎなどに支障が出ないよう、ダイヤに余裕を持たせているはずです。
JR西日本は、福知山線のダイヤに余裕をもたせるよう再編成を考えているとのことですが、何故、事故が発生する前に、列車ダイヤの問題点に何故気づかないのか、不思議で仕方がありません。
今後、再編成したダイヤに、本当に問題がないかどうか第三者の検証も必要な気もしますが、列車ダイヤは交通システムの要であり、これに不信感をもたれると言うのは、あまりにも情けない状況です。
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■ 2005.05.28 ブログ公開 ”宝塚線の運転再開、「ゆとりダイヤ」が大前提 -国土交通省”
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■ *当時の内容。誤解やミスがあるかもしれません、ご了承ください。
■ * 無効なURLも多々あります。
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現代は、時間優先・効率優先の社会である。”誰よりも早く・安く”が企業の合い言葉になり、企業活動の第一優先になっている。
しかし、”早く・安く”は、”スピード優先、無駄なものは排除”になり、ひいては、”安全・品質に係わるものが軽視され、削られる”可能性が大いにある。
この一例が、今回のJR宝塚線(福知山線)の脱線事故であるが、この事故以外にも、”誰よりも早く・安く”が引き起こした事故は多い。
なお、国土交通省は、JR宝塚線(福知山線)の脱線事故について、JR西日本が検討している減便や停車時間の延長だけでなく、最高速度(制限速度)の抑制を含む大幅な再編成を指導することを決め、宝塚線の運転再開には、こうした「ゆとりダイヤ」が大前提になるとしている。
これまで、国土交通省と言ってもピンとこなかったが、JR宝塚線の事故についての国土交通省の対応は、迅速かつ的確・具体的であり、拍手を送りたい。宝塚線の運転再開に”速度制限ができる新型の自動列車停止装置(ATS―P)の導入”が必須としたのも国土交通省であり、そのお陰で、JR宝塚線への新型の自動列車停止装置の導入が加速された。
しかし、JR西日本は、JR宝塚線再開の前提として、当初、新型の自動列車停止装置の設置は考えておらず、今回の「ゆとりダイヤ」についても、「見直し作業を再検討するのは難しい。この時期に言われても1週間や2週間はかかってしまう」と消極的である。(下記参考情報)
なお、宝塚線では03年12月のダイヤ改定で、快速電車の停車駅が1駅増えたにもかかわらず、所要時間は変更されず、また、乗客が乗り降りする時間が最短で15秒しかない駅があるなど、脱線事故の背景として「余裕のないダイヤが運転士に重圧を与えていた」と指摘されている。(下記参考情報)
参考情報:
”「全ダイヤ再編成を」 JR西に国交省、減速減便求める”(asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0523/OSK200505230066.html?ref=rss
企業活動にとって、それも人間の命を預かる交通関係の企業にとって、”安全”は第一優先の課題である。「ゆとりダイヤ」はひいては「安全ダイヤ」である。交通関係の企業には、ぜひとも、安全優先で企業活動を進めて欲しいものである。